文部省に行政文書開示請求をしてきました。

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

60年代に起きた数学教育の現代化運動についての卒論を書いています。その一環として、68年度の指導要領改訂のための審議会の議事録を文部科学省に請求し、閲覧が許可され、閲覧及び写真撮影(後述しますが資料の形態上、コピー機でコピーするのは難しかった)をしてきました。昨年それをやったので正月はそれを読んでいます。参考になるかもしれませんので、その課程を記録しておきます。

数学史にせよ教育史にせよやっている人は少ないわけで、数学教育史なんてやっている人はもっと少ないです。数学教育現代化運動についてのまとまった量の研究文献は、いろいろ探してはみたものの、本田伊克(2009)「1950,60年代の民間教育研究運動の成果と課題に関する学校知識論的考察―学教育協議会の事例に即して―」、一橋大学博士論文ぐらいしかありませんでした。研究を始める前には違う立場からの概説書を三冊ぐらい読んだほうがいい、どうしても一冊では偏るからとよくいわれます。本田論文も、民間団体の教育改革運動のダイナミズムを明らかにするという目的がはっきりし過ぎていて、(教育熱心とは限らない)現場の実情や、現場に対してかなりの拘束力を持っていた文部省(当時)についての記述は手薄でした。そこで卒論段階では現場はひとまず置いておき、文部省の方針を明確に説明しようと思いました。

本田論文によれば「「現代化」[1968年の]指導要領改訂の動きは、1965年6月14日、文部大臣が教育課程審議会に対して、「小学校・中学校の教育課程の改善について」諮問したことに始まる」(p.189)とされます。ではその教育課程審議会というものについての情報を集めよう、と思ったのが昨年の十一月の後半です。文科省のウェブサイトを最初見てみたのですが、いまいち情報がありません。審議会の最終答申は写しが出版されているようでしたが、どうせなら原本を探してみようと文科省に直接問い合わせてみることにしました。

情報公開制度の概要http://www.mext.go.jp/b_menu/koukai/main_b16.htm を見て電話をかけてみました。その際には「1968年の指導要領改訂のために1965年から開催された教育課程審議会の議事録は残っていますかー、最終答申がいつ出たかはわかっているのですがね」ぐらいの曖昧な質問をしました。しかし嫌なそぶりも係の人は見せず、親切な応対をしてもらいました。その場ではわからないので担当の課に問い合わせてみると言われてその日は終わります。その情報だけで勘案するとたらい回しに合っている最中だったともとれますが、その時は満足して電話を切りました。答申以外にも手に入るのではないかとの期待を込めて。実際に次の日に「高校はないけど、小・中、そして総会の議事録は残っています」と電話がきます。どうやら日本の文科省の情報公開担当は対応がいいようですね。

数日後に申請用紙が自宅あてに届きました。小中の二種類あるから300円×2種類=600円分の収入印紙を貼って出してくれとのことです。僕は収入印紙なんて買うのが初めてだったので web で検索したところ、コンビニや郵便局で売っている、しかし郵便局の方が種類は多いとのこと。郵便局で買って貼って(収入印紙は切手のように背面に糊がついています)出しました。

一週間後に受領通知が届き、そして一週間後に開示決定通知書が届きました。全部で1500頁ほどあり、閲覧(後述しますが、コピーはとれないとのこと)手数料は100枚あたり100円、その合計金額から300円引いたのが手数料で、既に払った600円に追加して払うとのこと。閲覧可能期間は通知書がとどいてから数日後から一ヶ月後までが指定してありました。1500枚(実際は見開きを一度に撮れるので半分ほどの枚数)を撮るのにどれほどの時間がかかるのか分からない、おそらく数日はかかるだろう、しかし閲覧に複数日使えるのか通知書だけでは分からない。そこで文科省に確認の電話をかけたところ、複数日可能であり、時間も事前に伝えてもらえれば融通が効くとのことでした。時間を指定して電話を切ります。

さて、思ったよりも枚数が多かったですね。少し書きましたが資料が古く、自動読み取り機をつかう、もしくは広げてコピーをとるのは難しい、強制はしないが閲覧だけにしてくれと言われました。写真撮影は可能だと聞いたら可能だとのことです。僕はあんまり写真とか撮らない方なので勝手がわかりません。そこでフェイスブックで質問することに



1968年に、指導要領改定があった。卒論で旧文部省の教育課程審議会におけるその決定過程を扱おうとおもって、「とりあえずあるだけ開示してくれ」と文科省に請求したら、「高校はない、それ以外(小中、小中高包括したもの)はだいたいある」と言われ開示請求が通った。B5で1500枚ほどあるそうだ。一ヶ月ほど見ることが可能な期間があり、複数回通うのは可能だが、あちらの都合もあるからある程度事前に言ってもらえれば助かるとのこと。

そこでみなさんにお聞きしたいのですが、1. 全部写真を撮るべきか。コピーは古い資料なのでお断りと言われた。撮るべきだとは思う。2.撮るべきであれば注意すべきことはあるか3.一日で全部撮ってしまうべきか。それともそれ以前に予備作業をするべきか。

資料そのものがどの程度もろくなっているかなど、分からないこと尽くめです。こういう古い資料を扱うこと自体初めてなので勝手が分かりません。一度文科省に行って全体像を見れば分かることも多いでしょう、ですがそれ以前に何か助言をいただければありがたいです。

ありがたいことに反応がありました。


稲葉 肇様: では老婆心ながら,技術的なことについて.写真は撮れるならば可能な限り撮るべきです(たとえパソコン持ち込み可であっても筆写は記録できる量に制約が出てきます).できれば,カメラに(小さくてもいいので)三脚をつけて,決まった距離・角度で次々と撮影できるようにしておくと作業が楽ですし,フラッシュも焚かなくていいし,見やすい画像が得られます(最近はそういう資料撮影用の三脚もあるようですが,ある程度首の向きを調整できるならそれでも十分だと思います).資料がどのような形態で保存されているか不明ですが,普通のアーカイブのようにBoxの中にfolderが入っているような感じだったら,中身を撮影する前にBox, folderの類も撮っておくとあとで整理するときに助かります.いずれにせよ,論文で参照できないと困るので,調査後に必ず自分で目録(資料と入っている場所の対応付け)を作成しておきませう.あと,聞いた話では,カメラはよくても三脚はだめとか,カメラもだめとか,パソコンすら持ち込み禁止とか,いろいろなパターンがあるようです.何を使っていいのか,事前に問い合わせておくのが大事です.(いっぱい書いちゃいました.ごめんね)


田中 幹人様: さらに重ねて私からも技術的なことを:

1) カメラは↑稲葉様が指摘の通り、三脚や自作の撮影ボックスなどで固定して撮った方が良いです。

2) リモートレリーズがあった方が良いです。
きちんとやるとこんな感じ:
http://www.pref.tottori.lg.jp/secure/724553/dscn7212.jpg

3) OCRが使えると、恐ろしく捗ります。Evernote有料版のOCRも結構使えるようになってきたので、一時的に課金サービスを実験しても良いかも。

全体の手順を含め、OCRまで事前に練習して置いた方が良いです。途中の手間が多少かかっても、特定の文字などを検索出来ればそれに越したことはありません。

事前の準備は大変ですが、これが周到なほど、後でラクが出来ますし、分析も深まります。頑張って下さいませ!


稲葉様、田中様、ありがとうございました!!!


練習を積み・・・となるはずが、体調が悪かったのを言い訳に練習をせずに当日を迎えてしまいました。デジタルカメラ・リモートレリーズ、三脚(http://bb-wave.biglobe.ne.jp/digital/040607.htmlのようなもの)を別々の先輩から借りて霞が関に向かいます。余談ですが文科省の正門前に虎ノ門駅があることに行ってから気づきました。次の日はそちらを使いました。

そんなに待たされずに係の人に連れられ、情報公開室に向かいます。10畳ほどの部屋に長机がおいてあり、そこの上で閲覧をしてくださいとのこと。資料とご対面。印象としてはとにかく分厚い。8cm ぐらいのと10cm ぐらいのがありました。端にパンチがしてあって、そこに糸を通して綴じてあります。そんなに分厚いと広げてコピーとるのは不可能だとよく分かりました。さて世間話をしながら準備します。利用層はどういう方が多いと聞くとマスコミ関連の人が多いとのこと。特に311以降は原発関連で多かったそうです。また、複数人が利用するときは隣の会議室も使うそうです。そして、これくらい古い資料は残っていないことも多い、重要と判断されたものはマイクロフィルム化されて文書館へと行くとのことでした。

練習をしていかなかったつけがきて、準備には手間取ります。資料が分厚く、接写用のレンズでなかったためか、三脚の足を伸ばしきっても全体が映らないのには困りました。カメラを真下ではなく、やや斜め前方にむけ、それにあわせて資料をずらすことにします。そうするとなんとか資料との距離をとれ、全体を写すことができました。さて様子をみながら撮影だ。ページをめくるときに資料の位置がぶれるので、一枚ごとに画面で確認しながら撮影。予想外のことに、係の人がめくる・広げる(ページの境目が埋まって見難くなるのを防ぐ)ことを手伝ってくれたからよかったものの、それがなければもっと大変だっただろう。途中でデジカメがちょくちょくフリーズというトラブルに見舞われるものの、順調に撮影は進む。これはその日のうちに全部撮影できるかと思いきや、二時間、八百頁ほど撮ったところで、数十枚残し電源が切れてしまった・・・翌日午後続きをやると約束してその日は帰ることに。その晩は視野からはみ出ているページがないか、ページの境目が埋もれずにちゃんと写っているか、撮り忘れがないか、ピントがぼけていないかチェックする・・・なんと六時間かけても終わらん。中断して次の日に備えて寝ることに。

次の日は九時半に電話で起こされる。急に情報公開室の都合が悪くなった、その次の日にしてくれないかとのこと。承諾し、二度寝、起きてから画像整理の続き。三時間ほどかかった。目がしょぼしょぼしました。

さてその次の日、気を取り直してうまく取れていなかったページ、残りのページを50頁ほど撮影。その場でノートパソコンを使いちゃんと写っているかチェック(しかし家に帰って整理したときに撮り漏れを見つける)。

いろいろ反省点はありますが、それらを事前に対応できたかは難しい。ただ、実際に何かしら被写体を用意して、撮影の練習をすることはやるべきでしたね。