「『物理学の世紀』フェア」@駒場書籍部

岡本拓司先生が「『物理学の世紀』フェア」@駒場書籍部。によせた、「『20世紀物理学史』刊行にあたって」という小文がすさまじい。スケールが大きすぎる。以下概略:
20世紀初頭の相対論・量子論による科学の変容を「保守的な革命」と岡本は位置づける。そしてそれ以前では自明とされていた16・17世紀の科学革命の意義を、さらには科学そのものの意味を、保守的な革命によってより高い精度で考えることができるようになったと彼は主張する。
例えば、「科学理論は自然の姿を忠実に反映している」というテーゼを例にとろう。保守的な革命以前にどの程度信じられていたかについては詳述されていないが、相対論・量子論がこのテーゼを覆してしまったことは明らかだろう。その事件は「自然を理論が反映しているとはどのような事態か」、「理論とは何か」という大きな問題を、換言すれば「科学とは何であるか」を考える上で大きな問題を、世界にはっきりとした形で(どの時点でかは述べられていないが)提出することとなった。
矢野の感想としては、「科学が何であるかを考える上で、その歴史の検討が基本的な役割を担っていることが理解されよう」という、(矢野にとっては)自明なテーゼの導入がやや強引であること以外は、非の付け所のない素晴らしいものだ、というもの。やや「非歴史的」な検討(現代正しいとされている理論間の関係の解明など)の役割を小さく見積もっているのではないか、という疑念がある。マアこういう解釈をとらない人もいるということは理解しているし、いずれにせよ、素晴らしい小文です。みなさん駒場書籍部へとっととGo!!!