中間発表

ドラフトそのものは、さすがに人に見せられる段階ではないので、1週間前の卒論中間発表(題目発表会)で作ったレジュメを載せておきます。書誌情報が形式そろってないとか、ダメダメなところはありますが・・・

卒論タイトル案
小学校算数科の現代化の分析―「集合の考え」を用いた図形分野を中心に

目次案
1. 序論
2. 現代化学習指導要領

2 - 1. 高度成長期という時代
2 - 2. 現代化学習指導要領の制定過程
2 - 3. 現代化学習指導要領の特徴

3. アメリカの学校数学研究会によるモデル教科書

3 - 1. 学校数学研究会が目指したもの
3 - 2. 集合論を用いた幾何の取扱い

4. 啓林館発行教科書および指導書

4 - 1. 「集合の考え」が用いられた項目
4 - 2. 「集合の考え」を用いた図形分野

5. 現代化カリキュラムへの反応

5 - 1. 文部省の動向
5 - 2. 数学者・教育学者・教師の反応
5 - 3. 数学教育協議会による批判

6. 結論

問題意識
 スプートニク・ショック以降、数学・算数教育を、現代数学の発展が多少なりとも反映されたものにしようとする気運は世界中で高まった。それを受け算数(数学)教育現代化運動とよばれる運動が勃発する。さまざまな教科書や教材が書かれ、1960年代から1970年代前半に全盛期を迎えるが、1980年になるころには過去のものとされてしまった
算数教育現代化が語られる上ではしばしば集合論がキーワードとされ、小学生に集合論を教え込もうとしたとの言説も見受けられる。しかし、それは日本に関しては、実情を十分に反映したものではない。文部官僚による当時の学習指導要領についての解説を見てみれば、集合論そのものではなく、「算数の考え方」、「集合の考え方」が現代化を特徴づけるものとして提示されている。論者により、「考え方」の説明は異なり、そのことはしばしば文部省に対立する団体により批判されてきた。しかしいずれの論者も現代数学の理論・方法そのものを教えこむことよりも、それが児童の考え方に「転移」させること、すなわち生活の場面における推論に役立たせることを目指した点では見解が一致する。
児童の推論の力を向上させることを目指し、様々な教材が作られた。だが現場の教育では、多くは形式的な指導しかなされず、児童からも教師からも不満が続出する。集合を教えることの是非は新聞でとり挙げられるほどの社会問題となった。
では、何故、形式にとどまらない技能向上を目指した教材による指導が形式的なものへと堕してしまったのだろうか?その答えは、教材そのものの分析に求められる。当論文では、図形分野において集合の考え方を用いた教科書の記述の分析を、1. アメリカの算数(数学)教育現代化を牽引した学校数学研究会(School Mathematics Study Group)との比較、2. 数学教育協議会(数教協)という、数学教育の改革を文部省の方針とは全く異なったやり方で目指した団体による批判を手がかりにして行う。

主要参考文献
本田伊克(2009)「1950,60年代の民間教育研究運動の成果と課題に関する学校知識論的考察―数学教育協議会の事例に即して―」一橋大学大学院博士論文。
水原克敏(1992)『現代日本の教育課程改革』風間書房
啓林館発行算数教科書及び算数指導書(1970年度版;余裕があれば1973、1976年度版も調べる)
『数学教室』(さまざまな号)
数学教育会誌』(さまざまな号)
数学教育学会誌』(さまざまな号)
『現代教育科学』25巻4号(1982年)
Christopher James Phillips (2011)"The American Subject: The New Math and the Making of a Citizen" Ph. D dissertation at Harvard University。
SMSG, Mathematics for the Elementary School (Book1からBook6まで)
SMSG, Mathematics for the Elementary School Teacher’s Commentary (Book1からBook6まで)

進捗報告
第二章は本田(2009)に主に依拠しながら書く。おおよそ書けた(5000語程度)。第三章に関しては資料を教育学部図書館から取り寄せ中。さらっとしか扱わない蓋然性が高い。第四章は、啓林館指導書1970年版の「集合」と「集合の考えを用いた図形」の記述は通読した。第五章は『現代教育科学』1982年4月号の「数学教育の現代化はなぜ失敗したか」特集を通読。『数学教室』の該当記事を読み進めているところである。