「『物理学の世紀』フェア」@駒場書籍部

岡本拓司先生が「『物理学の世紀』フェア」@駒場書籍部。によせた、「『20世紀物理学史』刊行にあたって」という小文がすさまじい。スケールが大きすぎる。以下概略:
20世紀初頭の相対論・量子論による科学の変容を「保守的な革命」と岡本は位置づける。そしてそれ以前では自明とされていた16・17世紀の科学革命の意義を、さらには科学そのものの意味を、保守的な革命によってより高い精度で考えることができるようになったと彼は主張する。
例えば、「科学理論は自然の姿を忠実に反映している」というテーゼを例にとろう。保守的な革命以前にどの程度信じられていたかについては詳述されていないが、相対論・量子論がこのテーゼを覆してしまったことは明らかだろう。その事件は「自然を理論が反映しているとはどのような事態か」、「理論とは何か」という大きな問題を、換言すれば「科学とは何であるか」を考える上で大きな問題を、世界にはっきりとした形で(どの時点でかは述べられていないが)提出することとなった。
矢野の感想としては、「科学が何であるかを考える上で、その歴史の検討が基本的な役割を担っていることが理解されよう」という、(矢野にとっては)自明なテーゼの導入がやや強引であること以外は、非の付け所のない素晴らしいものだ、というもの。やや「非歴史的」な検討(現代正しいとされている理論間の関係の解明など)の役割を小さく見積もっているのではないか、という疑念がある。マアこういう解釈をとらない人もいるということは理解しているし、いずれにせよ、素晴らしい小文です。みなさん駒場書籍部へとっととGo!!!

指導教員の先生と面談・副指導教員の先生のゼミ

先日、指導教員の先生に一時間ほど面談していただきました。まだまだ記述が荒いけど、全体の構成はこれでいいのでどんどん書いていって下さいとのことでした。

その次の日に副指導教員の先生の、生徒・先生が進捗報告をするゼミがありました。僕も発表しました。そこで先生から、序論は今のところは全体の地図としてうまく機能しているけど、最終的には全面的に書き直してね、というのも序論というのはその論文で書かれていることを知らない人にその内容を紹介するところだからさ、とのことでした。

その後、先生の発表を拝聴しました。さすがの情報量・調査の厚みです。内容は日本の工学のおこりに関するもので、工学と理学の関係を導きの糸とするものでした。さらにアメリカやイギリスの事例と比較しながら、日本の工学のあり方を探っています。アメリカでは、3年制の工学を勉強する大学=サイエンティフィック・スクールというのがハーバードにあったそうです。そこで出されていた学位は Ph. B(哲学学士)というもので、通常の学士とは区別(差別)されていたなどなど。工学と理学の関係はどの国でも一筋縄ではいかないのだなあ、と痛感しました。当たり前ですが、性格の違うシステムを比較することによって、単体を見ることでは得られない視点が手に入りますね!ちなみに http://www.minervashobo.co.jp/book/b182600.html この本に掲載される予定です。

資料のメモの取り方

線を引きながらいっぺん読む→読み終わる→メモをとる
というのが普通だと思うんですが、しばらくしてから資料を読み返してメモを見ると、びっくりするぐらい情報が抜けていることに気づきます。
結局、
線を引きながらいっぺん読む→読み終わる→もっぺん線を引きながら読む→しばらく置いておく
→もぉいっっぺん線を引きながら読む→まえの線の引き方に苦笑→読み終わる→もっぺん線を引きながら読む
→また置いておく
→もっぺん線を引きながら読む→今度は苦笑しない→読み終わる→線を引いたところを書き写したり、要約したり→びっくりするぐらい読み落としていることに気づき、唖然とする。
みたいになっています。メモをつくり終わるまでの時間にいろいろ考えるから、最初は読めていなかった箇所が読めるようになるのかもしれませんがねぇ。

こつこついこう

こつこつ資料を読んでいます。今日は啓林館という出版社による、算数指導書というのを精読していました。精読はとても疲れます。ですので合間に筋トレや散歩をはさみました。筋トレや散歩のあいだに資料読んでたのかもしれませんね、ふふふ。

BMS(Biological Sciences and Medicine Studies Seminar)での発表

研究室の、Biological Sciences and Medicine Studies Seminar=生命論・医学論ゼミで一時間ほどで卒論の序論を検討していただくことになりました。他の友人2人の院試面接対策がおわってからで、彼ら彼女らの鋭さに刺激を受けたこともあり、気が引き締まりまった中での発表でした。

多くの方から、様々な角度のコメントを頂きました。中には、私の論文の致命的な欠陥の指摘も・・・そしてその欠陥を乗り越える指摘までもがありました。有難いことです。

序論には注釈が沢山付いているのでここに載せるのが大変です。目次と進捗状況だけ載せておきましょう。


小学校算数科の現代化の分析―「集合の考え」を用いた図形分野を中心に

目次
1. 序論
2. 現代化学習指導要領
2 - 1. 高度成長期という時代
2 - 2. 現代化学習指導要領の制定過程
2 - 3. 現代化学習指導要領の特徴
3. アメリカの学校数学研究会によるモデル教科書
3 - 1. 学校数学研究会が目指したもの
3 - 2. 集合論を用いた幾何の取扱い
3 - 3. 学校数学研究会の日本での受容
4. 啓林館発行教科書および指導書
4 - 1. 「集合の考え」が用いられた項目
4 - 2. 「集合の考え」を用いた図形分野
5. 現代化カリキュラムへの反応
5 - 1. 文部省の動向
5 - 2. 数学者・教育学者・教師の反応
5 - 3. 数学教育協議会による批判
6. 結論

途中経過
1. 大分練り直した。しかし、最後に全面的に書きなおすであろう。
2-1 資料読み込みが終わっていない。だいぶ昔に読んだだけ。
2-2. 本田(2009)を参照する。第一稿はできている。
2-3. 本田(2009)並びに、中島健三の諸論文、現代化学習指導要領そのものを参照する。ひと通り読み込んだが、まだ原稿は30%程度しかできていない。
3-1. Phillips (2011) を参照する。資料読みこみのみが終わっている。
3-2. 学校数学研究会の教科書を参照する。本当に簡単に記述する予定。
3-3. 教育課程審議会の議事録や、啓林館指導書、『数学教室』、『アメリカのSMSG』などを参照する。簡単に好評価→低評価へと変遷を遂げたことを簡単に記述したい。
4-1. 啓林館指導書にある、集合の考えを用いた項目リストを参照し、簡単に各項目の紹介をする。集合を明示的につかう必要でないことを主張する。教科書のコピーは、低学年のものがまだ手許にない。他はひと通り目を通した。
4-2. 練習問題が少なく、しかも洗練されていないことを主張する。何度か目を通したが、上手い論述の筋を組み立てられていない。
5-1. 本田(2009)の記述をベースにする。
5-2. 小平邦彦の発言や、『現代教育科学』の現代化失敗特集を参照する。
5-3. 上記の現代化失敗特集での銀林浩の発言ならびに、『数学教室』の各記事を参照する。『数学教室』の方は目を通せていないものが多い。
6. 教材が洗練されていなかったため、失敗したという結論にする予定。第一に、同時代の集合の教材をより洗練させるべきという証言、第二にある時期から数学教育に導入され受け入れられた分野(高校生への微積分、『原論』とは違ったスタイルの幾何教育など)ではよい教材が作られていたこと、この二種類を傍証とする。また余裕があれば、public understanding of science の一貫として算数教育を位置づけることにより、STS科学史と算数教育史を接続させる。

論述へのご指導

今日は哲学の K さんに草稿を読んでいただきました。「スプートニク・ショック云々でこうなったとあるが、それは科学史業界では自明なのか」、「ここで X を A 及び Bと比較するとある。その構図はとても綺麗だから、A と B の素性をもっと詳しくそこで語るべきではないか」、「前の箇所で当論文は X を行うと書いてあるのに、ぜんぜん違う Y を後で行っている、それでいいのか」などとさすがの鋭いご指摘でした。

ちなみに順に回答すると、1つ目は、1ステップ置けば十分説明したことになるが、そのステップが抜けていれば科学史家でも分からない;2つ目はその通り、最初はもっと詳しく書いていたのが、A と B の初出がもっと前になったので、そこに詳しい記述を移してしまった;3つ目もその通り、最初に「 X と Y を行う」と書き換えよう。

といったところです。皆さまのおかげもあって、かたつむりの歩みのようですが、着実に進んでおります。

ドラフトを先輩に読んでいいただきました。

何も見ずにドラフトを書く局面は終わりを終えました。序論はそこそこ書けたけど、結論はダッメダメ。うーん。今後の課題ですね。

先輩のFさん(明治期医療の社会史の若手ホープ。特に、研究会・勉強会の企画能力が抜群です。とてもマメな方でいつも見習いたいと思っております)とNさん(進化論史で研究を始められたばかりの方。文章がとてもお上手です。もともとアニ研で色々書かれていたそうです。アニメ評論やフェミニズムについて色々教えていたでいています)にドラフトを読んでいただきました。「現時点ではそこそこ良く出いている」、「よく知っているはずのことが、こんな歴史を持っていたとは意外だ」、「本体をどんどん書いていこう」とのお褒めの言葉を頂きました。とても勇気づけられたとともに、気を引き締めてどんどん書いていこうと決意を新たにしました。